August 26, 2003

[Journey] 一週間日本縦断の旅…秋田県能代市~北海道函館市 '03. 8.26

目が覚めると、頭が痛い。体もだるい。

やべえ、風邪ひいたかな…昨日、風呂から上がってそのまま寝てしまったので、湯冷めしたのかもしれない。これから北へいくにつれて日々気温が下がっていく。無理は禁物だ。そうは言っても常に移動を強いられるこの旅では大人しくしているわけにはいられないのが辛い。

これから乗る五能線は、青森の五所川原と、能代を結んでいることから、そう呼ばれる。そしてこの線は大部分を日本海に沿って走るため景色のよさでも有名で、海を見るためにわざわざ車両を大きな窓に改造した特別列車も走っている。

五能線に乗るのは十数年振りだ。

 

03082601noshirostnAkita, KONICA Digital Revio KD-500Z (2003.8)

バスケの街・能代。駅のホームでバスケットができそうだ。

以前五能線に乗ったときは、景色はもちろんだけど、途中の深浦という駅の売店で買った鮭のおにぎりが妙に美味かったことがなぜか印象に残っていた。考えてみれば米どころの秋田県の中で、かつ魚が獲れる地域で作られたものなのだから、当然といえば当然なのだけど。

今回はその味を再確認するため(…)、深浦で途中下車する。

 

03082602fukaurastnAomori, KONICA HEXAR RF with M-HEXANON 50mm F2 (2003.8)

だが、駅構内にあったはずの売店はなくなっていた。他におにぎりを売っているところがないか探すと、駅前のよろず屋で鮭とスジコのおにぎりを見つけることができた。製造者の住所は青森県の弘前と書かれており、純粋な地元産ではなかった。もっとも、以前食べたおにぎりも厳密にどこで作られたものだか覚えているわけではない。

1個ずつ買って、食べてみる。体調が悪く食欲がほとんどなかったけれど、それでも美味く感じた。東京のコンビニで売っている高級おにぎりより美味かった。やはり大したものだ(…?)。

深浦は五能線沿線の町の中では大きな部類に属するけれども、海以外に特にめぼしい観光地はない。とりあえず海岸に出てみる。海の色が、昨日の新潟とはまた少し違っている。基本的に淡いのは同じだけれど、ブルーではなくて灰色っぽい。もっとも、それは今日の曇りがちな天気のせいかもしれないし、昨日この地域で降ったという大雨の影響もあるのだろう。

 

03082603fukaurabeachAomori, KONICA HEXAR RF with M-HEXANON 50mm F2 (2003.8)

深浦から乗った列車は、件の窓の大きな特別列車「リゾートしらかみ」号だった。眺望がよく、たしかに気持ちがよい。車内はヨーロッパの列車のようなコンパートメントになっていた。

 

03082604gonoulineAomori, KONICA Digital Revio KD-500Z (2003.8)

途中、五所川原駅から中年女性三人の旅行客が同じコンパートメントに乗ってきた。女性のグループとあって、食べ物がコンパートメントのテーブル続々と広げられる。そしてコンパートメントという性質上、私も煎餅とか焼きイカとかのおすそ分けにあずかる。それにしてもえらく食い物を買いこんでいるものだと感心する。「日本縦断」という豪勢な旅をしている割に、深浦のおにぎりで喜んでいた自分が情けない。

いつの間にかテーブルの上は食べ物でいっぱいになった。

一人の女性がそれを見て言った。

「焼きイカ捨てちゃおうか?東京まで持って帰るのいやだわ」

実はイカが好物の私としては「捨てるくらいだったら残りは全部俺にくれ」と言いたいところだったけれど、自分のデイパックにも既に深浦のよろず屋で買ったサキイカが入っていたので、焼きイカには申し訳ないが黙っていた。

 

03082605aomoristnAomori, KONICA HEXAR RF with M-HEXANON 50mm F2 (2003.8)

青森駅で彼女らと別れてから、待ち時間を利用して、海にちなんで、ということで駅近くの岸壁に展示されている元青函連絡船の八甲田丸を見学する。傍らでは石川さゆりの「津軽海峡冬景色」が流れている。ベタだけど、いいなあ。できれば竜飛岬なども寄ってみたいところだが、今回は時間がない。

 

03082606seikanrenrakusenAomori, KONICA HEXAR RF with M-HEXANON 50mm F2 (2003.8)

そして青函トンネルを抜けて函館へ。

夕暮れ時ということもあったのかもしれないけれども、ひんやりとした空気に北海道に来たことを感じる。今日はここまで。ホテルにチェックインし、疲労がたまっていたので早々に床につくと、電気をつけたまま寝てしまった。

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August 25, 2003

[Journey] 一週間日本縦断の旅…富山県富山市~秋田県能代市 '03. 8.25

睡眠時間5時間ほどで、昨日に続いて今日も7時前の列車で旅立つ。普段の生活より忙しいような気がする。考えてみれば、いつもは最寄り駅7時43分の電車で通勤しているわけだし…それでもモチベーションが維持されているような気がするのは、毎日ステージを移動している性格の旅だからだと思う。

今日の最終目的地は秋田県の能代だ。富山から新潟・山形を経て秋田まで移動距離は長い。600km近くだ。

 

03082501oyashirazustnNigata, KONICA HEXAR RF with LEICA SUMMICRON 35mm F2 (2003.8)

最初の下車駅は親不知(おやしらず)。奥歯の親しらずとは関係ない。日本海の断崖絶壁に荒波が押し寄せるこの地域はかつて交通の難所であり、通行する際には、波のひいた瞬間に波打ち際を素早く走り抜けなけれならなかった。そのとき、子は親を顧みる余裕などなかったことから「親不知」という名が付いたといわれる(他にもいくつかの説がある)。

で、現在はこの難所を鉄道はトンネルで通過し、最近できたらしい高速道は海上にはみ出した橋で通り抜けている。

そんなわけで駅のホームから海を見ると、海上に突き出した高速道路が視界を塞いで見通しが悪い。けれども地形的には現在も難所であることは変わらないのだから、そうせざるを得なかったのだろう。

「駅から徒歩10分」と案内がある歌ヶ浜海水浴場に行ってみる。しかしこれがまた見事に高速道路の高架橋下にあり、車の音がうるさく、そして高架橋で陽が遮られているため、何だか思わず笑ってしまうくらい気の毒な光景になってしまっていた。

 

03082502oyashirazubeachNigata, KONICA HEXAR RF with LEICA SUMMICRON 35mm F2 (2003.8)

おそらく高速道路ができる前ならば、ここに泳ぎに来る人もそれなりにいたのだろうけれど、今はほとんどいないだろう。

そして、ここで海の色が変わってきていることに気づく。九州や山陰で見た日本海の色に比べて透明っぽく、色が淡い。例えるならば、抹茶と煎茶のような違いがある。かえってわからなくなったかもしれないが。これが北国の海の色なのだろうか。

親不知から直江津へ。信越本線に乗り換える。

次の目的地は信越本線の笠島駅と青海川駅だ。両駅は隣同士で、どちらも海の近くにある。

笠島駅のホームから海に面した弁天様が見えたので、旅の無事を祈願する。

 

03082503bentenNigata, KONICA HEXAR RF with M-HEXANON 50mm F2 (2003.8)

鮮やかな鳥居が海のブルーに映えて美しい。

青海川駅までおよそ2キロなので、歩いていく。しかし海のすぐそばにある駅と崖上にある道路の間、数十メートルのアップダウンを強いられ、炎天下の中、逝きそうになる。

 

03082504nihonkaiNigata, KONICA HEXAR RF with M-HEXANON 50mm F2 (2003.8)

それでもどうにか青海川駅にたどり着くことができた。この駅はホームがほとんど波打ち際に位置しているので、「日本海にいちばん近い駅」としてしばしばドラマやテレビコマーシャルのロケに使われている。しかし、やはり小さな無人駅だ。

 

03082507oumigawastnhomeNigata, KONICA HEXAR RF with M-HEXANON 50mm F2 (2003.8)

駅前の自動販売機でスポーツドリンクを1リットル買い一気に飲んでいると、待合室にいた一人の怪しい鉄道マニアらしい男性が、逆に私のことも怪しいと思ったのか、私を避けるようにホームへ歩いていった。彼はほとんど汗をかいてないようだった。列車を降りたっきり、駅から外に出ていないのだろうか。

 

03082505oumigawastnNigata, KONICA HEXAR RF with M-HEXANON 50mm F2 (2003.8)

電車に乗ってひと息つく。足腰が痛い。考えてみれば、朝から晩まで列車に乗っているか駅の周辺をほっつき歩いているかどっちかなんだから当然だ。

実はこの旅の計画を1週間前に立てたときには、時間的に多少移動がきついかもしれないとは感じていたのだけれども、まあ列車の中で寝てればいいやー、程度に考えていた。

しかし。

私は自分が列車の中では熟睡できないという習性を考慮していなかった。今日も出発が朝早いのは計画通りだったけれども、「新潟から能代までは特急列車に約5時間乗り通しなので、その間に眠っていれば何とかなる」程度に軽く考えていた。だが現実は、ビールを飲んでも足腰の痛み且つ座ったまま体勢を大きく変えられない辛さでほとんど眠れなかった。嗚呼…。

 

03082506beerintrainNigata, KONICA Digital Revio KD-500Z (2003.8)

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August 24, 2003

[Journey] 一週間日本縦断の旅…鳥取県鳥取市~富山県富山市 '03. 8.24

鳥取駅前で「鳥取砂丘バス20分」と書かれている掲示を見つける。鳥取砂丘が意外に近くにあることを知る。

私は全ての都道府県を旅行したことがある。といっても、山陰を訪れたことは少ない。鳥取県は大学時代にサークルの合宿で玉造温泉へ行ったとき以来19年振り2回目、島根県は高校の修学旅行で津和野に行ったとき以来、22年振り2回目だ。なんだか高校野球の出場校紹介みたいだが。昔から私は、日本でも海外でも、行ったことのないところの地理には詳しくないのだ。それにしても、こんなに町から近いのだったら砂丘も予定に入れておけばよかった。しかし今日は富山まで歩を進める予定なので朝7時前の列車で鳥取を発たねばならず、余裕がない。代わりに砂丘の砂で温めたというゆで卵『砂たまご』を買い、出発する。

 

03082401sandeggTottori, KONICA Digital Revio KD-500Z (2003.8)

砂たまご。味はほぼ普通のゆで卵。

この日、最初に降りたのは鎧(よろい)という駅。ここもひなびた無人駅だが、ホームから見える海は絶景だ。

 

03082402yoroistnHyogo, KONICA HEXAR RF with LEICA SUMMICRON 35mm F2 (2003.8)

そのせいか、ベンチも線路の方ではなく海の方を向いているのが微笑ましい。

 

03082403benchinstnHyogo, KONICA Digital Revio KD-500Z (2003.8)

公衆便所のように地味なコンクリート造りの駅舎を出ると、駅前には木造の年期の入った家が立ち並び、「ドラマ『ふたりっ子』ロケの町」と書かれた看板が立つ。たしかに街は、時代もののドラマのセットのような趣を感じる。しかし、看板はかなり色褪せてしまっている。もっとも、看板に描かれている幼いマナ・カナちゃんも現在では宮崎美子さんと区別がつかなくなってしまっているのだが。

 

03082404manakanaHyogo, KONICA Digital Revio KD-500Z (2003.8)

さて。このあとは山陰本線から舞鶴線に乗り換えて、舞鶴港に行く予定にしていた。

しかし列車を乗り継ぐうちにだんだん天気が怪しくなり、ついに東舞鶴の駅に着く直前に激しい夕立が起こる。滝のような雨と轟音にビビり、下車することを断念。雷怖いし。

しかし、今日舞鶴に行かなかったから明日は行けるというわけでもない。今日は富山まで行って泊まり、明日はさらに北を目指すのだ。連日、海沿いに移動しているこの旅では、基本的に一期一会。いや、ひょっとしたら舞鶴には、もう永遠に来ることはないかもしれない。なぜなら生まれて39年、今まで一度も来たことがなかったし。これもひとつの運命だ。Farewell 舞鶴。別に淋しくないぜ。とりあえず。

 

03082405inrainKyoto, KONICA Digital Revio KD-500Z (2003.8)

しかし今度は、舞鶴線から乗り換えた小浜線の電車が大雨のために動けなくなってしまった。15時20分の発車予定が、「復旧見通し立たず」という。暇つぶしのための本を買いにキオスクへ行ったけれど、手頃な本が見つからず、悩んだ末に「週刊ポスト」と「週刊現代」を購入し、読み比べながら復旧を待つ。はじめてこのジャンルの雑誌を熟読したのだけれど、この2誌って、グラビアやら袋とじやら銀はがしやら、誌面の構成がそっくりなんだな。舞鶴豪雨のおかげで、図らずも知ることができた。

復旧したのは、結局18時前だった。私の乗った列車は復旧後の一番列車なので、途中までは徐行運転。本来なら東舞鶴から2時間で着く敦賀には、さらに数十分遅れて到着した。

そして北陸本線の特急に乗り換えて富山へ。駅前のホテルにチェックインしたときには23時近くになっていた。

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August 23, 2003

[Journey] 一週間日本縦断の旅…山口県下関市~鳥取県鳥取市 '03. 8.23

最近のビジネスホテルは価格破壊のおかげで、安くてもきれいな所も珍しくない。しかし昨晩泊まったホテルの部屋は、古くて、風呂にはカビ跡があちこちに残り、洗面台からはほのかにゲロのような臭いがする、今日びの日本では珍しいほどの寂れた宿だった。一泊5,000円だったから、そう文句も言えないけれども、500ルピーでも高いんじゃねえかと感じた…って、たとえがインドの通貨単位だよ、そりゃ。

駅に行く前に、市内を少し散歩する。下関を歩くのは1998年に韓国・釜山行きの船に乗る前に立ち寄ったとき以来だ。

 

03082301soaplandinsimonosekiYamaguchi, KONICA Digital Revio KD-500Z (2003.8)

以前訪れたとき目についた、漁港のすぐ近くにあるソープランド街は健在だった。しかし朝早いためこれらの店はまだ開いておらず、いれば気になる呼び込みの姿もない。静かな通りを歩くうち、艶かしい店の間に古びた食堂があるのを見つけた。

 

03082302restraninsimonosekiYamaguchi, KONICA Digital Revio KD-500Z (2003.8)

もう暖簾がかかっている。この店もソープランドと同じように、漁から帰ってきた人を迎えるためにあるのだろうか。このエリアの奥の深さを感じる。

できれば時間を割いて、もう少しこの街を味わいたいところだが(ソープも早いところでは9時から開店するみたいだし…ってそれは違う…違うぞ…汗)、先を急ぐ。

山陰本線の普通列車に乗り、飯井(いい)という駅で降りる。短いホームひとつだけの無人駅だ。下車したのは私ひとり。駅は高台の上にあり、ホームから海が見下ろせる。駅前には酒屋が一軒あるだけ。

 

03082303iistnYamaguchi, KONICA HEXAR RF with LEICA SUMMICRON 35mm F2 (2003.8)

10分ほど歩いて、静かな入り江に出る。一応、海水浴場になっているようだけれども、8月末の平日である今日は、天気がよいにも関わらず数人の釣り人と1組の家族連れがいるだけで、静かそのものだった。実態は近所の人たちのプライベートビーチのようだ。いいなあ。

 

03082304beachiiYamaguchi, KONICA HEXAR RF with LEICA SUMMICRON 35mm F2 (2003.8)

まさに、ため息が出るくらい美しい海。

ふたたび山陰本線で移動する。山陰本線は「本線」という名が付いている割には、普通列車はバスもどきのトイレもない一両編成のディーゼル車であったり、特急もトイレは辛うじてあるものの二両編成であったりする。

 

03082305saninexpShimane, KONICA Digital Revio KD-500Z (2003.8)

19時過ぎに今日の宿泊地、鳥取着。

 

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August 22, 2003

[Journey] 一週間日本縦断の旅…長崎県長崎市~山口県下関市 '03. 8.22

東京・羽田から朝イチの飛行機に乗り、昼前に長崎市街に到着。

 

03082201nagasakicityNagasaki, KONICA HEXAR RF with M-HEXANON 50mm F2 (2003.8)

とりあえずちゃんぽんを食おうとリンガーハットに入った。「しかし何も長崎まで来て、わざわざリンガーハットでちゃんぽん食うこともねーよなあ」と思いながら、ふと自問自答する。

「…長崎って日本海か?」

地図をよく見ると、長崎市が接する海は日本海というより東シナ海に面した入り江のようなところにも見えた。「日本海」がテーマだったら、この旅の起点は、長崎よりも北にある佐世保あたりの方がふさわしいような気もする。佐世保からは、海沿いに平戸を経て佐賀県の伊万里へ抜ける鉄道がある。それに乗る方が地理的にはフィットする。

でもなあ。

「佐世保→稚内」では、何だか収まりが悪い。マニアックだ。長崎からでも結局はマニアックなんだけど。でも、やっぱり「長崎→稚内」の方がサマになるような気がする。

まあいいか。所詮この旅のルールブックは俺だし。

というわけで、これ以上は深く考えないことにして、長崎駅近くの出島に行く。

 

03082202portofnagasakiNagasaki, KONICA HEXAR RF with M-HEXANON 50mm F2 (2003.8)

出島は日本が鎖国していた時代に唯一開かれていた港だ。何となく、重みのある日本縦断旅行の起点にふさわしい地だと思う。写真を何枚か撮り、駅へ。

 

03082203nagasakistnNagasaki, KONICA HEXAR RF with M-HEXANON 50mm F2 (2003.8)

改札で「長崎→稚内」の乗車券を差し出すと、きっぷを見た駅員さんが一瞬ギョッとしたように見えた。しかし、すぐ平然とした様子に戻って私にきっぷを返した。私だって駅員の立場だったら、こんなきっぷを持ったオッサンとはあんまり関わりたくない。

14時過ぎの普通列車で長崎を発つ。市街を抜けて数十分走ると、左手に海が見えた。

 

03082204intrainNagasaki, KONICA Digital Revio KD-500Z (2003.8)

日本海なんだか東シナ海なんだか考えに迷ううちに車窓から海が遠ざかっていく。佐賀や博多を素通りし、関門トンネルを通って山口県の下関へ。約10時間で今回の旅の九州滞在終了。

今夜は下関に泊まる。下関の町はあまり垢抜けしていないけれど活気を感じる、独特の雰囲気があると思う。明日は早起きして町の中をちょっと歩いてみよう。

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August 21, 2003

[Journey] 一週間日本縦断の旅…プロローグ

日本一周、というのは子供のころ多くの人が夢に描いたことがあると思う。私が子供のころは海外旅行はまだ一般的ではなかったから、小学校の卒業アルバムの中にあった『将来やってみたいこと』に「日本一周」と書いた子が結構いたものだった。

ちなみに私は、そのときそこになぜか「四国一周」と書いていた。

ショボいんだか個性的なんだかよくわからない夢で我ながら今では何ともコメントしがたいのだが(ちなみに私は当時も今も四国には何の縁もゆかりもない。そしてこの夢は未だ実現していないし、今後する予定もない)、おそらく地図を見ていて、一周するのに手ごろな形をしていたのでそう考えたのではないかと思う。

そう。日本の国土は細長いので、一周には不向きなのだ。日本という国を踏破するには、一周より、南北を縦断する方が効率的なのである。

では、日本縦断の代表的なコースというのはあるのだろうか。

日本の南端は、一般的に言って沖縄県である。正確にいえば日本最南端の沖の鳥島は東京都に属するけれども、一般人が行けない場所なので、ここで語っても意味がない。人の住んでいる所では、沖縄県の石垣島近くにある波照間島が最南端だ。しかし波照間島から九州・鹿児島までは点在する島を船または飛行機で移動しなければならないため、その間は行程が単調になる難点がある。そこで、九州本島の最南端にあたる鹿児島県の佐多岬と北海道の最北端である宗谷岬を結ぶというのが、割と代表的といえる縦断ルートのようだった。

けれども佐多岬と宗谷岬の間を列車やバス等で移動したところで特に面白いというわけでもないので、この間を、マイカー・自転車や徒歩等、手段にこだわって旅をするのが、巷でよく聞く日本縦断の話だ。

しかし私にとって移動手段はどうでもよかった。むしろなるべくいろいろな経由地を楽しみながら日本を縦断したい。だが私もサラリーマンの身であるがゆえ、時間に制限がある。1週間程度で実行可能なことも重要な条件のひとつだ。

こうしてあるとき、日本海沿いに列車に乗って、海の見える駅で何ヵ所か途中下車しながら南から北まで行こうという旅行計画を漠然と考えたことがあった。

九州から北海道へは列車に乗りっぱなしで3~4日くらいと思われるので、適当に乗り降りしていたらちょうど1週間程度の旅程に収まりそうだ。日本海の位置を考えると、起点は九州西部の長崎で、終点は北海道・稚内が適当だろう。

しかし長い間その計画が具体化することはなかった。それはもちろん、わざわざそんなことをするよりも、目的地を絞って旅行するほうが、いろいろな面で楽だからだ。ゆえにこの計画も、小学校当時の私の夢である「四国一周」と同じように陽の目を見る機会はないと思っていた。

だが2003年夏、この「一週間日本縦断計画」が私の脳内で突如脚光をあびるときがきた。

この年の私の夏休みは、日程が決まるのが遅かった。

上司に文句を言われながらも何とか7日間の休暇を獲得し、一応、とある外国へ行くつもりで航空券の予約を入れた。だが申し込みが遅かったためになかなかOKの返事を得られなかった。

10日前になっても「WT(キャンセル待ち)」状態だったので、代わりの旅行先を考えることにした。せっかく1週間休めるのにどこにも行かないのはもったいない。しかし海外航空券を手に入れるのはむずかしい。そのとき思い浮かんだのが、「一週間日本縦断計画」だった。

書店で大きい時刻表を買ってきた。そしてインターネットで、海が近くにある駅の情報を調べた。鉄道マニアにはインターネット好きの人が多いのか、この手の情報は割と充実している。そうしていくつかの駅を見つくろい、ざっと全体の計画を立てた。

翌日、JTBに行き、長崎から稚内までの乗車券を買う。ルートは、こんな感じだ。

長崎(長崎本線)鳥栖(鹿児島本線)門司(山陽本線)下関(山陰本線)綾部(舞鶴線)東舞鶴(小浜線)敦賀(北陸本線)直江津(信越本線)新潟(白新線・羽越本線)秋田(奥羽本線)東能代(五能線)川部(奥羽本線)青森(津軽線・海峡線)函館(函館本線)旭川(宗谷本線)稚内

窓口のお姉さんは、私が申込書に書いたこのルートを目にして顔を引きつらせた。気がついて、反射的に「すいません」と言ってしまった。別に謝ることはないのだが。

乗車券は¥25,930だった。日本縦断のきっぷとして考えれば安いような気がしないでもない。もっとも特急券などは、後にその場その場で買う予定にしているので別払いとなる。

次に、私が住む東京と、この旅の起点・終点の間の航空券を買う。航空券はJTBでは買わず、金券ショップの大黒屋へ行く。その場で羽田→長崎と稚内→羽田の航空券を予約。国内旅行はシャキシャキ予約が進むところがよい。

こうして夢の「一週間日本縦断計画」は、実行1週間前に急遽実現の運びとなった。

03082101thjmap一週間日本縦断ルート
(この地図は「白地図MapMap」の地図画像を編集して作成しました)

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