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June 2019の3件の記事

June 16, 2019

千代田湯の銭湯絵を検証する

せっかく北陸へ行ったので、ついでに、気になっていたことを検証するため富山県高岡市に立ち寄った。

気になっていたのは、先日廃業した北大塚・千代田湯の浴室に描かれていた絵のことだ。海と立山連峰をバックにトンネルから出てくる北陸新幹線の絵は、どこまでリアルだったのか。

 

19061601wallpaintinginchiyodayuTokyo, CASIO HIGH SPEED EXILIM EX-ZR4000 (2019. 6)

実はこの絵を初めて見たときから、なんとなく「実物はこうだったっけ?」と疑問に感じる部分がいくつかあった。千代田湯がなくなった今となっては遅きに失した感もあるけれど、せっかく北陸に行く機会ができたので、これらについて検証する。

富山へ行く前に、新幹線を検証する。

この絵を見たとき、まず、新幹線に違和感があった。しかしマニアではないので、どこがおかしいのか具体的にわからなかった。そこで北陸新幹線の車両を撮り、銭湯絵と比較する。

「東京都内で北陸新幹線を撮影できる場所」を検索して調べた、京浜東北線の王子駅近くにある「北とぴあ」へ。北とぴあは「東京都北区の産業の発展と区民の文化水準の高揚」を目的として作られた施設。「ほくとぴあ」と読む。最上階の17階が展望ロビーになっており、王子駅と付近を走る電車のビュースポットになっている。そこから新幹線を撮る。

 

19061602hokurikusinkansenFukui, SONY α6000 with TAMRON 18-200mm F3.5-6.3  (2019. 6)

なんか電車の形を詳しく検証するという目的の作例としては今ひとつになってしまった。だけどよく見ると、銭湯絵と実物の車両の色が違っているのがわかる…だろうか。銭湯絵の電車の前面が濃い青に赤帯なのに対して、実物は、明るい青色に茶色の帯だ。形そのものはあまり違っていないようなので、ひょっとしたら絵のモデルはモノクロ写真で、彩色を想像で適当に行なったのではないかと推測する。

次に、場所を検証する。

海上に山が浮かぶ光景が見えるのは、富山県高岡市の雨晴(あまはらし)海岸だ。雨晴には鉄道が通っているけれど、それは北陸新幹線ではない。氷見(ひみ)線という、ディーゼル車が走る単線のローカル線だ。従ってその時点で既にリアルな光景ではないのだけれど、ではどこまで現実に沿っているのか検証する。

 

19061603amaharashistnToyama, SONY α6000 with TAMRON 18-200mm F3.5-6.3  (2019. 6)

雨晴駅。どう見ても新幹線の駅ではない。雨晴という地名は、1187年に源義経がここを通った時に突然雨に降られ、岩屋で雨が上がるのを待ったことに由来する。

 

19061605yoshitsunerockToyama, SONY α6000 with TAMRON 18-200mm F3.5-6.3  (2019. 6)

今日もポツポツと雨が降ったりやんだりしている。傘を手に線路沿いを歩く。氷見線は、雨晴付近では海岸沿いを走る。銭湯絵では列車がトンネルから出るところが描かれていた。雨晴付近にも一ヵ所トンネルがある。モデルになっているとすればそこだろう。

線路沿いの道を歩いてトンネルの入口へ向かう。しかしトンネルの入口は、道路から見えない死角にあった。

 

19061604tunnelToyama, SONY α6000 with TAMRON 18-200mm F3.5-6.3  (2019. 6)

しかも背景は、山ではなく工場。

仕方がないのでトンネルもあきらめて、単に海沿いを走る氷見線の列車を撮る。雲がなければ山は見えたはずなのだけど、今ひとつ冴えない絵になってしまった。結論。千代田湯の絵は、かなり現実とかけ離れていた。

 

19061606seasideToyama, SONY α6000 with TAMRON 18-200mm F3.5-6.3  (2019. 6)

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June 15, 2019

[Journey] 福井県高浜町~おおい町・若州人形座公演 '19. 6.15

19061501wakasawadastnFukui, SONY α6000 with SONY Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA (2019. 6)

JR小浜線・若狭和田駅。一日の乗客数は121人(2017年)の、小さな駅。しかし駅には「ピースフル和田」という観光案内所があり、無人駅ではなく、電車のきっぷも売っている。

この駅がある福井県高浜町には、原子力発電所がある。10分歩いたところに、関西電力のPR館「若狭たかはまエルどらんど」がある。

 

19061502eldolandFukui, SONY α6000 with SONY Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA (2019. 6)

原発コーナーは「アトムプラザ」と名づけられており、人形に説明していただいたけれど、残念ながらこれまで訪ねた他のPR施設に比べると展示内容は薄めに感じた。

 

19061503atomplazaFukui, CASIO HIGH SPEED EXILIM EX-ZR4000 (2019. 6)

隣の、おおい町へ移動する。少し山側に入り、若州一滴文庫へ。昨年に続いて今年も若州人形座の竹人形劇を見に来た。今回の演目は水上勉作品の「越前竹人形」。今日もまた満員御礼だ。

 

19061504fullthanksFukui, CASIO HIGH SPEED EXILIM EX-ZR4000 (2019. 6)

上演時間1時間20分。原作は文庫本で167ページの量なので長編ではないけれど、場面転換が多いため、劇では多少内容が端折られていた。また小説の主人公は小柄な男性の喜助(きすけ)だけど、劇は喜助の美しい嫁・玉枝を中心に描かれていたように感じた。それでも原作の原型は壊されていなかったと思った。そしてこの作品、結末はBad Endingで唐突に終わるのだけど、その、ぶっつり感もよく表現されていた。また、語りの飛鳥井かゞりさんもお見事。

昨年の「曽根崎心中」は水上作品ではなかったため見た後に若干の不満は残ったけれど、今日は、観劇後に尻が痛くなったことを除けば満足だった。いや梅雨空の下、福井まで来てよかった。

 

19061505rainydayFukui, SONY α6000 with SONY Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA (2019. 6)

そして来年の若州人形座公演、演目は「五番町夕霧楼」だとか。これは、来年も見に来いということでしょうか…。

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June 13, 2019

北大塚・千代田湯

19061201sugamoshindenstnTokyo, SONY α6000 with SONY Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA (2018. 8)

都電荒川線の巣鴨新田駅は、高校に隣接しているにも関わらず駅前には飲み屋とタバコ屋しかない。

ホーム脇の踏切で交わる細い道を歩き続けると、やがて急な坂になる。煤けたアパートや民家を横目に見ながら登りつめたところに、三軒の古い店がある。食堂と、よろず屋と、銭湯。店はその三軒だけなので「商店街」というほどではないけれど、考えてみると、この三つの店と銭湯に併設されたコインランドリーの存在によって、あとは屋根さえあれば日々の生活が持続可能だ。

食堂はメニューの種類が非常に多い典型的な大衆食堂で、味も価格も至って普通。しかしテレビ番組の「モヤモヤさまぁ~ず2」が池袋に来たときになぜかここで昼食をとったため、店の中に、さまぁ~ずご一行様のサインが誇らしげに飾られている。

よろず屋は外から見ると主に食料品を置いているようだけど、サクラカラー(死語)の看板が掲げられているのでフィルムや同時プリントなども扱っているかもしれない。開け放たれた店先では、いつも、婆さんが店番をしている。だが、客を見たことはない。私も店の中に入ったことは一度もない。

 

19061202masutami2Tokyo, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2014. 3)

ここの店頭に一時期、段ボール箱がひとつ置かれていたことがあった。箱の蓋に「¥238」となぐり書きされていた。なぜ238円なのかしばらく考えて、これを外税として消費税率をかけると、切りよく¥250になるからではないかと想像した。税率が5%だった頃だった。

段ボール箱には、切り餅のパックが入っていた。切り餅は売れないようで、長い間箱の中に入っていた。やがて正月になり、ついに餅の季節が来たかと思い年明けに店の前を通りかかると、箱の中に餅はなく、代わりにパイナップルがひとつ転がっていた。そのとき私は、パイナップルが税抜き¥238で買えることを知った。

店の前には缶ジュースの自動販売機が置かれていて、私もときどきそこでは買うことがある。しかしこの中の商品もまた一癖あって、逆輸入のコカコーラを¥80で売っていたり、賞味期限切れのペットボトルを¥70で売っていたりしていた。

 

19061203masutami1Tokyo, CASIO EXLIM ZOOM EX-Z200 (2008. 7)

あるとき、ウーロン茶のボタンの前に「メロンクリームソーダ」と書かれた紙切れが挟まっていたことがあった。興味本位にそのボタンを押したら、ウーロン茶が出てきた。

それら個性的な店と共にあるのが、今回紹介する千代田湯だ。

 

19061204chiyodayuTokyo, SONY α6000 with SONY Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA (2019. 6)

この宮造りの銭湯が開業したのは、戦後まもない頃らしい。豊島区にあるのに「千代田湯」というのは、経営者の老夫婦のダンナのほうが、ここを開業する前に千代田生命保険(現在のジブラルタ生命保険)に勤めていたからだという、本当だか冗談だかわからない話を聞いたことがある。冗談だとしたらあまり面白くないので、本当の話のような気がする。

千代田湯は都内の銭湯では珍しく、薪で湯を沸かしている。住宅地では煙の問題がありそうなものだけど、建屋の横には常に廃材が積まれており、ダンナが火にくべている。千代田湯に向かう途中で煙の匂いを感じられたときは、いつも気分がよい。湯は熱めで、浴槽の水温計はいつも46度を指している。だが本当に46度だったら入れるわけがないので、実際は43度か、せいぜい44度くらいだといわれる。

内装は木造で、それだけでレトロな雰囲気を醸している。脱衣所にはアナログの体重計が置かれ、壁に掲げられた料金表は「昭和…年現在」と書かれた脇に現在の料金を貼った紙が貼られている。料金表の横には、私がここに初めて来たときから十年以上ずっと停まったままの柱時計が掛けられており、それは、この空間の時間が変化していないことを示唆しているようにも見える。

浴室の壁には、富士山の絵が描かれていた。普段銭湯に行かない人は、銭湯には富士山の絵が当たり前のようにあると思っているかもしれないけれど、現実には、今の銭湯では建物の新古を問わず富士山の絵が描かれているところは多くないと思う。少なくともこの近辺に5~6軒ある銭湯の中では、千代田湯が唯一だった。しかし何年か前、唐突に絵が描きかえられていた。雪の山脈をバックに走る電車の絵だ。見覚えがある景色だった。立山連峰と新幹線だ。なんでまたこの絵になったかといえば、ここの経営者が富山県出身だからという理由らしかった。北陸新幹線が開通した頃だった。

富士山の絵も希少だったけれど北陸新幹線の絵はもっと希少だったので、年季の入った見た目と共に、千代田湯はユニークかつレトロ銭湯として紹介される機会がほんの少しばかり増えた。

 

19061213hokurikutriangle

これは『コミックフラッパー』に連載中の漫画「北陸とらいあんぐる」の一節。「ももいろクローバーZ」が出演したテレビドラマにも使われたことがあった。

しかし安泰な時期は長く続かなかった。数年前、よろず屋が突然閉店した。そして内部を大改装し、なぜかシェアハウスになった。すりガラスの窓から、ベトナム語が透けて見えた。外国人を相手に部屋を貸しているようだった。

モヤモヤさまぁ~ずが来た食堂も「店主体調不良のため休業します」と張り紙がされたまま店をたたんでしまった。

 

19061212restaurantTokyo, SONY α6000 with SONY Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA (2018. 8)

もともと地味な界隈ではあったけれど、店が減ったことで活気を失ない、より殺風景になってしまった感があった。ある日千代田湯へ向かう途中の坂で、泣きそうな顔をしたベトナム人の若い女の子から道を聞かれたことがあった。彼女のスマホに映るGoogle Mapを見ながら、異国のこんな所で道に迷ったら泣きたくもなるよな、と同情した。

 

19061211otukainthenightTokyo, SONY α6000 with SONY Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA (2018. 8)

千代田湯は取り残されたように見えた。ここも長くはないだろうと率直に感じた。経営者夫婦も決して若くは見えないし、彼らに子供がいるかどうか知らないけれど、後継者になりそうな人は見たことがなかった。

千代田湯廃業の告知が脱衣所に貼られているのを見たのは、5月の終わりごろだった。営業は6月12日までと書かれていた。

廃業は覚悟していたことではあったけれど、最後にやっておきたいことがあった。千代田湯の、中の写真を撮らせてもらうことだ。恐るおそる番台の女将に尋ねると「他にお客さんがいないときであればよい」という返事をいただいた。廃業の告知は脱衣所内にあるだけで店外にはなかったので、幸い、最終日が近くなっても一見客の数が大きく増えることはなかった。数日後、21時過ぎ、男湯に他の客がいなくなったのを見計らって、女将に一言断りを入れてから写真を撮らせていただいた。

 

19061205bathroom19061206kerorin19061207notice19061208healthmeterTokyo, SONY α6000 with SONY Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA (2019. 6)

千代田湯が廃業したあと、併設されていたコインランドリーも休業した。やがて建物もなくなり、周囲の住宅地に同化するだろう。

それはもちろん残念なことだけど、千代田湯とその周辺一帯の最後の姿を知ることができたのは幸運だった。


19061210oshiraseTokyo, SONY α6000 with SONY Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA (2019. 6)

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