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September 19, 2017

[Journey] 旧・大泊町 (Korsakov)/南樺太 '17. 9.19

台風は昨夜遅く、ちょうど樺太に上陸したあたりで温帯低気圧に変わり、日本で報道されていたときよりだいぶ勢力が落ちたようだった。昨晩は、雨はずっと降っていたけれど風はあまり強いと感じなかった。けれども昨日ユジノサハリンスク市内の学校は休校になり、停電したところもあったとニュースは伝えていた。私がいるホテルがその中に数えられていたかどうかはわからないけれど。

まだ台風一過の快晴、とまではいかないものの、朝には雨は上がっていた。今日からバスで足を伸ばして郊外の町を訪ねる。

駅前のバスターミナルから小型のバスに乗り約1時間。コルサコフという港町に着く。ロシアの人名のように聞こえるけれど、その通りで、町の名前は東シベリア総督だったミハイル・セミョーノヴィチ・コルサコフに由来する。日本時代は「大泊」と呼ばれ、稚内との間を稚泊連絡船が結んでいた。現在も北海道サハリン航路株式会社のフェリーが、夏季の間のみ稚内とコルサコフの間を週2~3便運航している。所要時間は4時間半。実はこの船で来ることもちょっと考えたけれど、ホームページの画像にあった船が小さく見えて(80人乗りとのこと)、これに長時間乗るのがためらわれたのと、悪天候などで欠航したときのリカバリーが大変そうだったので飛行機にした。


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北海道サハリン航路株式会社のホームページより)

まず、港を一望できる高台に上がる。


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Karapto/Sakhalinskaja, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2017. 9)

まだ薄暗い色の空が、北国の圧迫感を増幅させる。

高台には塔が建っていた。


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Karapto/Sakhalinskaja, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2017. 9)

稚内で見た「氷雪の門」に何となく似ている。氷雪の門のRepriseかと思い、英語で書かれた説明を読む。

Memorial for Korean
victims of Japanese militarism
Sculptor: Republic of Korea
Date: October 15, 2007

韓国人の慰霊塔だった。樺太には日本植民地時代に日本人とともに移り住んだ韓国人が約4万人いた。現在も、サハリン州の人口49万人のうち5%は朝鮮人とされる(「サハリン州の概要~2015年版」北海道庁【PDFファイル】)。

しかし氷雪の門に何となく似た形にした理由を詮索すると、また、薄暗い気持ちになる。

市街地へ。歴史・郷土博物館に入る。


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Karapto/Sakhalinskaja, CASIO HIGH SPEED EXILIM EX-ZR4000 (2017. 9)

日本時代の資料が多く、日本人にとっては当たり前に見える茶碗や箸などの食器や、日本語で書かれた書籍などが展示されていた。日本時代の街の写真が映し出されるスライドショーを興味深く見ていたところ、傍らにいた女性職員から、そのスライドが収められていると思しきCD-ROMを「500ルーブル(¥950)…」と言われて勧められる。だが、そこまで興味はなかった。

彼女からコルサコフ市の歴史や概況が書かれた日本語の無料パンフレットをいただいた。


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1904-1905日露戦争の結果、日本の樺太庁という新たな行政単位はサハリンの地図にできた。それは第二次世界大戦の終戦1945年9月まで存在した。当時、町は日本語で大泊と名づけられ、「大きな停泊所」と訳された。
都市の発展きっかけとなった日本時代は第二次世界大戦の終日、1945年9月2日に幕を閉じた。それと同時にソベート新しい時期が始まった。1946年6月コルサコフM.S.を記念していよいよその名が取り返された。
(原文ママ)

失った土地を奪還したのが、コルサコフ市の歴史だ。南樺太を巡る戦いは1945年8月9日のソ連の対日宣戦布告に始まり、9月2日の日本のポツダム宣言への調印・発効で終わった。そこには真珠湾も玉音放送も関係はなかった。


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青に彩った暁、霧に包まれ、
アニワ湾を広げ、船舶、海員を抱き、
海辺で歓迎して、抱き込む…私の町

コルサコフ市

歴史は、見る角度によって見え方が変わる。一面から見て善悪を論じることはたやすいけれど、違う視点で見ている人にそれを説明することは難しい。


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Karapto/Sakhalinskaja, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2017. 9)

港のそばにあった赤レンガ倉庫。北海道・士別でも、このような倉庫を見たことを思い出す。年代もののように見えるので、日本時代に作られたものかもしれない。


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Karapto/Sakhalinskaja, CASIO HIGH SPEED EXILIM EX-ZR4000 (2017. 9)

ほかにも町なかで古びた建物を見ると、つい「もしかするとこれも日本時代のものだろうか」という目で見てしまう。


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Karapto/Sakhalinskaja, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2017. 9)

これは戦前、王子製紙の工場だった建物で、数年前まで操業していたらしい。とはいうものの、うちの近所の銭湯に立つものより短く見える煙突を目の当たりにすると、70年以上前のものとはいえ、長く使われていたことに対して「ありがたい」というより「いいのかそれで」と感じてしまう。


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Karapto/Sakhalinskaja, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2017. 9)

町の目抜き通り・クラスノフローツカヤ通り沿いにあった石段。よく見ると歪んでいる。頑強に作られているはずの石段はメンテナンスフリーなものだと今まで思っていたけれど、放置し続ければ歪んでいくことを知る。

この石段の先には、かつて神社があった。石段は、その名残だ。歪んだ石段を注意深く登る。その先には…


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Karapto/Sakhalinskaja, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2017. 9)

…何もなかった。

神社の名前は「亜庭神社」だった。町に面した海は亜庭湾と呼ばれていた。町がコルサコフといわれるようになった今も、海の名前はアニワ湾だ。アニワと読む地名は岩手県盛岡市にもある。「安庭」という字が当てられたこの町の語源には、アイヌ語の「ア・ウン・イワ」=「我ら・そこにいる・聖なる山」とする説がある。南樺太へ最初に定住した人類は、アイヌだ。ロシア人は樺太を支配したときに日本語の地名をほとんど消し去ったけれど、アニワが残ったのはアイヌ由来の地名だったからかもしれない。


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Karapto/Sakhalinskaja, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2017. 9)

港が近く、日本からの航路もあることから、観光客を多く呼ぶことができるおしゃれな町になる可能性があるようにも感じたけれど、ここはロシアから見ても東の果て、日本から見ても北の果て…の、さらに先。発展するには、まだ時間がかかりそうに思われた。

時間に余裕があったので早めに戻り、ユジノサハリンスクの町はずれにある日本人死没者合同墓碑を訪ねる。

墓碑はロシア人向けの共同墓地の中にあった。


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Karapto/Sakhalinskaja, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2017. 9)

墓碑の脇には、新しい観音像が立っていた。観音像は昨年9月にできたものだった。


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Karapto/Sakhalinskaja, CASIO HIGH SPEED EXILIM EX-ZR4000 (2017. 9)

ソ連軍が南樺太を占領したあと、1989年まで外国人はサハリン州に立ち入ることができなかった。

日本とサハリンの関係も未だ模索状態であることを、真新しい観音像を見て、うっすらと感じる。

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