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February 2015の1件の記事

February 07, 2015

[Prowl] 千葉県いすみ市~市原市 '15. 2. 7

学生の頃、友人から「つげ義春とか好きでしょ?」といきなり言われたことがあった。

それは、当時、アルバイトの面接で店長から、やはりいきなり「AB型?」と聞かれたときと同じくらい、初球からインコースぎりぎりを狙って投げられた変化球のような質問だった。だが、その頃つげ氏の作品は読んだことはなかったし、特に興味もなかった。ついでに私はAB型でもなかった。

先日、新聞の書評に、つげ氏の最新作のことが載っていたのを見た。ふと、当時のことを思い出し、図書館で借りて読んでみた。代表作の漫画「ねじ式」も初めて読んだ。意外に、引っかかるところもなくすんなりと読めた。

もしこの作品を私が学生の頃に手にしていたら、すんなり読めただろうかと思った。時と経験は、ものの見方を変える。昔は大きく曲がって見えた球も、今ならば、目線を動かさずとも視野の中に軌道が収まって見えることもある。

つげ氏はまた、旅を好み、旅行記も何冊か残している。行き先は、わびしい国内の田舎町が多かった。著書には、彼が旅先で撮ったモノクロの写真も添えられていた。


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(「つげ義春: 夢と旅の世界」〔新潮社〕より)

考えてみれば今は、正月休みも終わり、かと言って、春の花が咲くにはまだ早い冬枯れの季節だ。旅行先を見つけるのに少し悩む時季でもある。

私も発想を変えて、わびしさを恐れずに旅先を考えてみた。そもそもこの先わびしさから逃げていたら、人生の選択肢が狭まる一方である。

そのとき頭に浮かんだのが、千葉県の養老渓谷だった。

養老渓谷は紅葉の名所として知られている。しかし今の時期、木々に葉はない。また、雪がたくさん降るわけでもないけれど、山の中なので、温暖な所ともいえない。近くには温泉(鉱泉)が湧いているけれど、調べたところ湯温25℃の加熱泉。また宿がある温泉街は駅から歩いて15分、そして、その鉄道も、電車ではなく、ディーゼルカーが走る私鉄。だが千葉県なので、東京からそれほど離れているわけではない。気軽にわびしさをたしなむには理想的な場所だ。ここまで調べたところで、つげ氏の旅の記録も調べると、彼も養老渓谷に行ったことがあるようだった。そして、同じ房総半島の海沿いにある大原に、子供の頃住んだことがあったらしい。そこで今日、この二つの町を日帰りで訪ねてみることにした。


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Chiba, SONY α6000 with YASHICA ML35mm F2.8 (2015. 2)

千葉駅で外房線の普通電車に乗り換えて、大原まで1時間強。駅から、まず、港を目指して歩く。なお、今日の画像は、つげ氏を倣ってモノクロで撮ることにする。レンズは35mm換算で標準50mm近くになる35mmレンズ一本勝負。ちなみにつげ氏はキヤノン4LやPといったレンジファインダー機で主に撮影していた。現在もデジタルカメラは持っていないらしい。


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Chiba, SONY α6000 with YASHICA ML35mm F2.8 (2015. 2)

大原の港はこじんまりとして、東京に近い割には観光地っぽさも少なく、ひなびた印象。海沿いの道をたどって八幡(はちまん)岬へ。名前から察しがつくとおり、岬の手前に神社がある。


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Chiba, SONY α6000 with YASHICA ML35mm F2.8 (2015. 2)

ベンチがあったので、千葉駅で買った駅弁と缶コーヒーで食事を取る。とりあえず私にとっては定番の二大千葉産グルメである万葉軒の「トンかつ弁当」とジョージアマックス。同時に口にすると、全く合わない。わびしさが増幅される。もっとも、今日の旅のテーマ的には問題ない。


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Chiba, SONY α6000 with YASHICA ML35mm F2.8 (2015. 2)

神社の脇から延びている、岬を巡る歩道を行く。

つげ氏が漫画評論家の石子順造氏を連れて八幡岬を案内したとき、石子氏は「これはすごい。ぼくの住んでいる焼津あたりの海よりずっといいね」と話したという。

たしかに、大原の漁港から太平洋の海岸線、砂浜が見渡せるこの岬の眺望はすばらしい。寒さを忘れて、しばし見入る。思わずスイングパノラマで撮影。


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Chiba, SONY α6000 with YASHICA ML35mm F2.8 (2015. 2)

駅へ戻り、いすみ鉄道の列車に乗る。養老渓谷は、この列車の終点の上総中野駅で小湊鉄道に乗り換えて、ひと駅先にある。このルートは数年前にも辿ったことがあった。今日は途中下車せずに上総中野へ。


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Chiba, SONY α6000 with YASHICA ML35mm F2.8 (2015. 2)

しかし上総中野駅での接続がよろしくなく、小湊鉄道の列車は1時間半待ち。ひと駅なので、歩いていくことにする。


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Chiba, SONY α6000 with YASHICA ML35mm F2.8 (2015. 2)

それほど険しくはないものの、アップダウンのある山道を1時間ほど行くと、温泉街の端っこらしきところに着いた。


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Chiba, SONY α6000 with YASHICA ML35mm F2.8 (2015. 2)

温泉宿は何軒かあるけれど結構広い範囲に散らばって建っていて、「街」と呼ぶには賑わいが乏しい気がする。

川沿いの遊歩道を歩く。冬枯れの色彩に欠ける光景が、モノクロで撮るといい具合に気にならない。渓谷を撮影していて、つげ氏は、広角のレンズで撮っていたんだなと気がつく。レンジファインダーのフィルムカメラだから標準レンズの50mmあたりを常用しているものかと、まずは想像していたけれど、単焦点付けっぱなしだと、やはり、もう少し広いレンズのほうが使いやすい。


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Chiba, SONY α6000 with YASHICA ML35mm F2.8 (2015. 2)

養老渓谷の駅の脇には、列車の利用客が無料で入ることができる足湯がある。足を浸けると、寒さがちょうどうまいこと和らぐ。


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Chiba, SONY α6000 with YASHICA ML35mm F2.8 (2015. 2)

つげ氏が大原に来たときには、海辺にあった国民宿舎に泊まり、養老渓谷でも温泉宿で一泊したと著書の「貧困旅行記」に書かれている。けれども、実際にここへ来る人の多くは、今日の私のように首都圏からの日帰りがほとんどだろう。足湯で列車の時間を気にしつつ「貧困旅行記」を読みながら、氏の旅は、たしかにある意味で貧困と呼ぶにふさわしいかもしれないけど、ある意味では結構贅沢だよね、と感じながら、小さなワビ旅、終了。


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Chiba, SONY α6000 with YASHICA ML35mm F2.8 (2015. 2)

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