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October 2014の2件の記事

October 12, 2014

[Tour] 茨城県北茨城市 '14.10.12

いわき駅から常磐線の普通電車で南へ。

勿来(なこそ)駅を過ぎる。勿来とは、漢文でよく目にしたことがある「勿」(なかれ)という文字と「来る」を合せたもので、「来るな」という意味があるという。そして、この駅の先に茨城県との県境がある。

茨城県に入って最初の駅・大津港で下車する。

五浦(いづら)海岸へ向かう。海は駅から3kmほど離れている。一応路線バスが通じているけれど、休日は走っていないので、歩いていく。途中、「復興住宅前」と手書きされたバス停を目にする。復興住宅に住む人も、休日はバスを使えない。


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Ibaraki, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2014.10)

1時間近くかかって、海辺に着く。

五浦は、19世紀末から20世紀初めにかけて近代思想家・美術評論家等として活躍した岡倉天心が住んだ地として知られる。

若いときには東京で暮らし、世界を駆け巡って日本文化の近代化のために尽力した天心は、40歳を過ぎた頃、五浦に土地を買い、生涯の後半をここで過ごした。海に面して建つ「六角堂」といわれるくすんだ赤色の小さな建物は、天心が設計した、彼の離れ書斎だった。


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Ibaraki, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2014.10)

ここでいただいたパンフレットによると、六角堂の建築には三つの意図が込められているといわれる。杜甫の草堂である六角亭子の構造、朱塗りの外壁と屋根上の如意宝珠、そして床の間と炉があり茶室としての役割を持つ室内。すなわち、中国、インド、日本の、アジア三国の伝統思想をひとつの建物全体で表現しているのだそうだ。


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Ibaraki, YASHICA 108 Multi Program with YASHICA ML24mm F2.8 (2003.10)

六角堂には、2003年にも来たことがある。上の、2003年当時の画像と比べると、今と変わらない様子にも見えるけれど、実は、この六角堂も津波で流されてしまい、現在あるのは、震災の1年後に再建されたものだという。

ここからしばらく歩いたところに海を見渡すことができる公園があると聞き、行ってみることにする。すでに日がだいぶ傾いている。つるべ落としの太陽と競争するように足を速める。


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Ibaraki, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2014.10)

彼方で灯台が光を放ち始めていた。だが、辛うじて空の明るさが残っているうちに公園へ着くことができた。

展望台から海を見下ろす。吸い込まれそうな濃い藍色をしている。時間が経つにつれて、その色は深みを増していく。岡倉天心は、ここで第二の人生をスタートさせた。私は、この地で、下北半島を起点に5ヶ月間にわたってちびりちびりと続けてきた北の旅に、ひとまずの終止符を打ちたいと思う。


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Ibaraki, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2014.10)

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[Tour] 福島県・浜通り '14.10.12

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Fukushima, CASIO HIGH SPEED EXILIM EX-ZR410 (2014.10)

午前5時48分いわき発の常磐線下り始発電車・竜田行き。

走り始めてしばらくすると、夜明けの太平洋岸や、稲穂がたわわに実った田んぼが車窓から見える。竜田まで鉄道が運転を再開したのは、今年6月1日のことだ。


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Fukushima, CASIO HIGH SPEED EXILIM EX-ZR410 (2014.10)

30分ほどで竜田に着く。私のほかにも何人か乗客がいたけれど、単に乗りにきただけなのか、駅の周りの写真を撮ると、折り返しの電車に戻っていった。


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Fukushima, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2014.10)

竜田駅まで電車が走るようになった最大の理由は、沿線の楢葉町が、福島第一原子力発電所事故によって避難している町民に対して「帰町の判断」を行ったことによる(詳細は楢葉町のホームページ参照)。ただし現在も駅周辺を含む町の大部分は避難指示解除準備区域とされ、立ち入りは可能であるけれど宿泊することはできない。従って、ここまで電車などで来ても、その日のうちに帰らなければいけない。


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Fukushima, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2014.10)

駅をあとに、町を歩く。このあたりは福島第一原子力発電所の半径20km以内に位置する。基本的に、現在、ここに住んではいけないはずだから、早朝の今の時間に人と会うことはほとんどない。

私は、手に線量計を持って歩いた。『エアカウンターS』という家電量販店で¥5,000くらいで買った安いものだけれど、広報されている値にもほぼ近い数字を示すので、それなりに当てになっていた。竜田駅の中に表示されていた線量率は0.199μSV/hだった。駅前の道路でエアカウンターSで計ったところ、0.2μSV/h前後だったから、およそ正確な値といっていいのだろう。だが、公園に入って、土の上で計ると、0.51μSV/hという値が出た。道路上の線量が低かったのは、おそらく除染が行われたためだと考える。


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Fukushima, CASIO HIGH SPEED EXILIM EX-ZR410 (2014.10)

電車は走っているし、缶ジュースの自動販売機も動いていたから、電気は普通に通じているようだ。家並みも、パッと見た目は普段と変わらない様子だけれど、セイタカアワダチソウが家の前におかれた鉢植えを占領していたり、建物が歪んだまま何の手立てもなく放置されていたり、2011年3月19日からクレヨンしんちゃんがやってくる告知が貼られていたりするなど、要は、あの日以降、人間の生活はほぼ止まったまま現在に至っている。


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Fukushima, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2014.10)

しかし治安悪化を防ぐための巡回は行われているようで、パトロールを実施した旨の通知が郵便受けなどに挟まっている家もしばしば見かけた。だが、言い換えれば、その紙の存在に私が気づいてしまうということは、家主が家に帰っていないことを意味していた。


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Fukushima, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2014.10)

時間が経つにつれて、駅から歩いて来る人や、車の姿をちらほら見かけるようになった。おばあさんが一人、丸くなった大きなリュックを背負って集落へ向かっていく。彼女の後姿が街中に消えていくのを見届けてから駅に戻り、いわき行きの電車に乗る。


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Fukushima, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2014.10)

いわき駅のホームで洗面台を見つけた。昔、夜行列車が多く走っていた頃は、早朝、顔を洗ったり歯を磨いたりするために、大きな駅のホームには洗面台があるのが常だった。今は利用する人もほとんどいないと思われるけれど、こうして残っているのを見ると、ちょっと嬉しい。


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Fukushima, SONY α6000 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2014.10)

さて。

今から午後にかけてどうするか、昨日まで、具体的なスケジュールを考えていなかった。いわき市内か近郊で、適当な観光スポットを見繕うつもりだった。

そんな中、昨晩いわき市で前泊するために駅前を歩いていたとき、目がキラキラした女の子からチラシをもらった。


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ライブの告知だった。

「『Baby Tiara』というグループで、震災孤児のためのチャリティユニットをしています。ライブをやりますので、よかったらTwitterとかでも拡散してください」

早口で彼女は言った。

「震災孤児のためのチャリティユニット」という言葉が耳に残った。

しかし所詮私は通りすがりの身、このためにいわきを再訪するほどのことは無いのねん…と思いながら、何気なくホテルの部屋であらためてチラシを見ると、ライブの時間は10月12日の昼12:00から、とある。おお何とJust Fitな時間帯。

…というわけで、早めの昼食をとって、いわき駅近くのバーで行われるライブに足を運ぶことにする。

このジャンルのアーティストのライブを、私が金を払って見るのは、1987年に代々木第一体育館で行われたおニャン子クラブの解散コンサート以来。なぜ当時おニャン子クラブを見に行ったのかという理由は、とりあえず置いておく。

この日は「定期ライブ」ということで、お客は身内らしき方か熱心なファンの方がほとんどのようだった。私にとってはアウェー感が半端なかったけれど、それでも、Baby Tiaraのメンバーの一所懸命な雰囲気は伝わってきた。MCでは「震災」や「チャリティ」関係のキーワードは、意外に出てこなかった。だがこれも、客の多くが彼女たちにとってお馴染み系の方々だったためかもしれない。「チャリティ」というキーワードについては、「私たちはチャリティユニットなのでお金がありませーん!」と言ってCD発売のための募金をお願いしていた場面があった。けれど、それはむしろその正直さに、かえって好感が持てた。それでも今回私が払ったチケット代のうち幾許かはチャリティに使われることを期待して、2時間のライブをきっちり見終えてから、会場を後にする。

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