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May 01, 2013

[Tour] 夕子の歩いた道を辿る(12) ’13. 5. 1

若狭本郷(福井県おおい町)

丹後地方の地理にあまり詳しくない私は、夕子の故郷は、てっきり養賢の生まれ育った寺のある集落がモデルだと思っていた。

しかしあらためて調べると、そうではなかった。

養賢の出身地は、京都府北部・舞鶴市の日本海に面した集落の成生(なりゅう)。これに対して、夕子が生まれたのは、「与謝半島の三つ股」だ。

「与謝半島」という名前を聞いたことがなかったので、架空の地名かと思っていた。だが、丹後半島のことを、別名で与謝半島と呼ぶこともあるようだった。丹後半島には、天橋立や宮津、経ヶ岬など著名な観光地が多い。観光地イメージを嫌って、作品では、あえて、メジャーとはいえない別名を使ったのかもしれない。

そして、なぜ舞台を成生ではなくて、その近所の丹後半島にしたかといえば、水上が、やはりこの近くにある福井県大飯郡おおい町で生まれたため、似た場所を物語の舞台として使い分けられるほど、この辺りに関する知識が豊富だったことが理由の一つとしてあったのではないかと考える。水上作品には、ほかにも、この地方を題材としたものが多数ある。


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丹後半島へ行く前に、水上の故郷の、おおい町に立ち寄った。福井県の西端にある、おおい町の中心にあたる旧・本郷村が、彼の出身地だ。最寄り駅はJR小浜線の若狭本郷である。

電車を降りて改札を抜けてから、駅舎を振り返って見て、その外観にギョッとする。


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Fukui, SONY Cyber-shot DSC-RX100 (2013. 5)

1990年に大阪で開催された「国際花と緑の博覧会」で、会場内を走っていた遊覧鉄道の「風車の駅」という駅の駅舎を移設してきたものだという。

駅前には商店は少ないけれど、道路は整備されている。少し歩くと、ひと気のない立派なグラウンドがある。ベンチにもたれたマスコットキャラクター「うみりん」(中に人が入っているのかと思ってまたびっくりしたのだけれど、実際には空気しか入っていなかった)から、力のない目線を送られる。


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Fukui, SONY Cyber-shot DSC-RX100 (2013. 5)

この町の海岸部には、関西電力の大飯発電所がある。現在、日本で唯一稼動している原子力発電所だ。こぎれいなインフラは、交付金の賜物だろう。もし水上がまだ生きていたら、故郷の今の姿に何を思い、著していただろうか。


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Fukui, SONY Cyber-shot DSC-RX100 (2013. 5)

水上ゆかりの施設として、町の郊外に「若州一滴文庫」がある。彼が主催していた若州人形座の人形、宗教・文学・美術関係の資料、蔵書などがある。展示物は数十分あれば見て回れるけれど、水上の著作などが数多く所蔵された図書室に入り込んでしまうと、時間がいくらあっても足りなくなる。


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Fukui, SONY Cyber-shot DSC-RX100 (2013. 5)

若州一滴文庫の名前は、この町出身の、儀山善来禅師の「一滴の水を惜しめ、草や木の命の声を聞け」という教えに由来する。

夕子も、正順も、養賢も、この地方の自然の中で生まれ育った。

そして今、ここには、原発がある。

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