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September 22, 2012

休眠口座を解約する

私が、昭和が終わったことを知ったのは、京都に住んでいた頃だった。卒業間近の時期だった。授業は週二日しかとっていなかったので、残りの日の多くは生活と卒業旅行のためのアルバイトに充てていた。

その日も、バイト先の喫茶店に行くために市バスに乗ると、途中、丸太町通沿いにある京都御苑の門のところに、多くの警官がいたのを見た。なぜ警官が多くいたのか、一瞬理解できなかったけれど、何となく空気を察した。店に着き、マスターから「今日は、これ、服に付けて」と喪章を渡されて、コトを確信したのだった。


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Kyoto, SONY NEX-5 with SONY E18-55mm F3.5-5.6 (2012. 9)

その仕事の給料は、お店が信用金庫に私の口座を新しく作って、そこに振り込まれていた。年末から二月頃までの短い間だけだったけれども、十数万円のお金が入金された。

そのほとんどは、予定通り、生活費や旅行に使った。しかし約一万円を、下ろさずに口座に残していた。はっきりした理由は忘れてしまったけれど、旅行中や、大学卒業から入社するまでの間、何か急に金が必要になったときの非常用にとっておいたのではないかと思う。

会社に入ってしばらくの間は関東に住んでいたので、京都の信用金庫に預けたお金を、手数料を払ってまで下ろす気にならなかった。そのうちにキャッシュカードを失くしてしまった。通帳は手元に残っているので、気になっていたものの、実際に店に足を運ばなければ預金に手をつけることはできなくなってしまった。

それから二十数年。東日本大震災の復興財源として、政府が休眠口座を活用しようとしていることをニュースで知った。

長年使っていない口座だから、そのお金を使われたところで大した影響はない。しかし、自分の意思の及ばないところで勝手に金を持っていかれるのは面白くない。

それ以来、関西に出かける用事ができたときに京都へ寄って、いい加減この預金口座にカタをつけなくては、と思っていた。そして、ようやく昨日、その機会ができたのだ。というか、平日にわざわざ京都へ行ったのは、それが主目的だった。

市の中心部にある信用金庫の本店窓口で、おそるおそる通帳と印鑑を差し出す。身分証明書の提示を求められたので、運転免許証を見せる。確認のために数分間待たされる。しばらくして店員さんに呼ばれた。

「今も、この口座、普通に使うことができますよ」

意外だった。しかし、キャッシュカードもないし、頻繁に京都へ来られるわけでもない。そのことを話し、申し訳ないけれども解約することにした。現金と、3ページに渡ってずらずらと「預金利息」のみ記帳された通帳が手元に返ってきた。23年間で付いた利息は¥630。約5%だった。最近は低金利なので、ほとんど¥1ずつとは言え、今年の9月10日まで、きっちり年二回、利息をつけてくれていたことには、心を動かされるものがあった。

「また京都へお戻りの時には、よろしくお願いします。ありがとうございました」

店員さんのその言葉に、重ねて申し訳ない気持ちになり、思わず「また京都へ戻ることはあるんだろうか。えーっと」と数秒間考えてしまった。

いわゆる学生時代の遺産に、今回、ひとつケリをつけたはずなのに、嬉しさよりも、なぜか寂しさのほうが心に広がってしまったのだった。


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