« Eclipse | Main | ブータンに日本大使館新設 »

May 27, 2012

そこに鉄道があるから

1205261ohharastn
Chiba, KONICA Digital Revio KD-500Z (2012. 5)

いすみ鉄道・大原駅に来た。

JR外房線と接続するこの駅から内陸部へ向かって走るいすみ鉄道に乗って終点の上総中野で小湊鐵道(正式な社名は「鉄」道ではなく「鐵」道と書くらしい)という私鉄に乗り継ぐと、海沿いを通らずに内房線の五井まで列車で房総半島を横断できる。

沿線には特に目立った観光地があるわけではない。しかし最近テレビ番組などでいすみ鉄道が取り上げられることが多く、関心を持っていた。

特に目立った観光地がなく、用事もないのに、昔、この線に乗ったことがあった。

高校生の頃、鉄道マニアの友人に誘われて、いすみ鉄道の前身である国鉄木原線の写真を撮りに行ったのだ。誘い文句は「都内での日常生活ではめったに目にすることがないディーゼルカーの列車が走っている」とか何とか…だったかな。たしか私は写真係だった。アルバイトをして買った一眼レフを持っていたから。

もっとも私がその誘いを受けたのも、ディーゼルカーがどうのということより、単なる、非日常的なものに対する興味のためではなかったかと思う。

そんな意味では、今も、私が旅をする目的っつーのは根本的に変わってはいないようだ。


12052612oharaold
Chiba, CANON FT with CANON FL 50mm F1.8 (1982. 9)

その当時、国鉄だった頃の大原駅と木原線の列車。この記事を書くためにネガフィルムを引っ張り出し、日付を見てビビった。

1982年9月。

30年前である。

これを撮ったとき、私の心の中で「30年前」なんていうのは、未知の古代であった。

その写真を、30年経って見る。懐かしいとか微笑ましいとかいうより、オノレの変わらぬ芸風に呆れる。

さて。そのとき乗った木原線は、のちに赤字のために国鉄の手を離れ、1988年、第三セクターのいすみ鉄道に経営母体が変わった。しかしそれでも経営状態は苦しく、路線廃止の話も持ち上がった。そこで苦境を脱出すべく、様々な再建策が講じられた。といっても先述したようにめぼしい見どころが少ないこの沿線では、普通に観光客などを増やし集客を図るのは難しい。そこで鉄道自体を観光の対象にしてしまおうと、国鉄の旧型ディーゼルカーを購入して急行列車として走らせたり、鉄道のキャラクターとしてムーミンを使ったりして、鉄道マニアやムーミンマニアの需要の掘り起こしを行った。その結果、大幅な売上増につながり、経営も改善したという。

30年前を偲んで、まず急行列車の走りを撮ってみる。


1205263express
Chiba, SONY α390 with MINOLTA AF ZOOM 24-85mm F3.5-4.5 NEW (2012. 5)

はいきれいに撮れました的に見えるかもしれないけど、図鑑や絵本に載っているようにバランスよく列車全体を構図に収めることは、意外と難しい。列車が来る前に車両の大きさや長さを予測し、そのうえで光線を読んで露出やシャッター速度を決めなければならない。シャッター速度優先モードなんて使ったの、いつ以来だろうかと。


12052611mumin
Chiba, SONY Cybershot DSC-W630 (2012. 5)

ムーミンがキャラクターとして使われている理由は、この沿線の、険しすぎず、しかし山がちの風景が、ムーミン谷に似ているからだという。


1205262buddhaandcastle
Chiba, SONY Cybershot DSC-W630 (2012. 5)

鉄道ばかりではなく、途中の国吉駅近く(といっても徒歩20分程度ある)にある海雄寺の寝釈迦像と、おそらく沿線随一の観光スポット・大多喜城にも足を運んだ。しかし寝釈迦像は施錠された無人の堂内にあり、窓の一部に穴が開いていて、そこから覗き込むシステム(…)となっていて、大多喜城は……まあ、城だよね……といったもので、やはり「ここを目的に行こう」っつーインパクトには今ひとつ欠けるような。

大多喜から先、終点の上総中野のちょい手前にある総元(ふさもと)駅で途中下車する。

前に来た時、この駅の近くで列車を撮った。


1205264fusamotoold
Chiba, CANON FT with CANON FL 135mm F3.5 (1982. 9)

それ以来、記憶の中では、木原線といえばこの画像が、印象として生き続けてていた。

しかし、その当時にしてシブく朽ちかけていた木造の駅舎は建て替えられていた。

あのときもたしか午後だったから、逆光だと、こっちの方向だよな…

道順は完全に忘れていたけれど、画像の記憶を頼りに当時の撮影場所を探す。

おそらくここだろう、と思われる踏切に来た。

しかし木や建物に遮られて、すっかり見通しが悪くなっていた。

30年ぶりの再訪は、残念ながら、記憶の光景を上書き消去するものだった。


1205264fusamotostnnow
Chiba, SONY α390 with MINOLTA AF ZOOM 24-85mm F3.5-4.5 NEW (2012. 5)

上総中野で、小湊鐵道に乗り換える。ここも古いディーゼルカーが走る私鉄で、マニアの方々には人気がある。けれども前にマニアの友人と訪れたときには、寄り道せずにまっすぐ終点まで乗っていった記憶がある。それは第一に、当時は「古い」車両でなかったこと、そして途中下車できない私鉄のきっぷでは、降りてきっぷを買いなおすと割高になってしまうためだったと思う。

だが鉄道会社も商売っ気を出し、現在は、乗り降り自由のフリーきっぷの類がいくつか売られている。今日私が持っているきっぷは、大原から五井までの間、JRの長距離片道きっぷのように途中下車できる「房総横断記念乗車券」というものだ。こんな便利なきっぷが当時もあれば、と、ふと、金欠の高校生時代のことを想う。

もっとも途中下車できたところで、小湊鐵道の沿線も、紅葉で有名な養老渓谷とその周囲の若干のハイキングコース以外、これといった観光地があるわけではない。しかしこの路線にも趣のある駅がいくつかあるので、日が暮れるまで、予め見つくろっておいたいくつかの無人駅で、適当に下りていった。


1205266kazusaohkubostn1
1205267kazusaohkubostn2
Chiba, SONY α390 with MINOLTA AF ZOOM 24-85mm F3.5-4.5 NEW (2012. 5)

駅では観光客の姿を何人か見かけた。中には鉄道マニアには見えないような人も結構いたけれど、車で来て、駅の写真を撮って、また車に乗って走り去っていく人達もいた。

既に小湊鐵道も、鉄道そのものが観光資源化しているのかもしれない。30年前の私のように、「そこに鉄道があるから」という理由でここを訪れる人も多いのだろう。

いや私はもう今日は、鉄道はお腹一杯といった感じなのですが。


12052610kazusatsurumaistn
Chiba, SONY α390 with MINOLTA AF ZOOM 24-85mm F3.5-4.5 NEW (2012. 5)

|

« Eclipse | Main | ブータンに日本大使館新設 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« Eclipse | Main | ブータンに日本大使館新設 »